うつ

うつについて

 「うつ」という言葉は、「抑うつ気分」「抑うつ状態」「うつ病」のような使い方をされますが、一般に混乱して理解されていることが多いようです。

抑うつ気分

 憂うつ気分、低下した気分のことです。
 誰しも、気持ちが落ち込むときもあれば、爽快な気分のときもありますが、気分は、常に変動しつつも一定の範囲内におさまっているのが通常です。「抑うつ気分」のみならば誰にでも起こりえるものです。

抑うつ状態

 「抑うつ気分」だけではなく、不眠・食欲不振・意欲低下・注意力や集中力の低下、そして自殺念慮など、一連の症状をいくつか伴っている「状態」を指しています。
 「抑うつ状態」は「うつ病」と同じではありません。「抑うつ状態」は、「うつ病」に限らずその他の精神症状や身体疾患など様々な原因によって生じるものです。

うつ病

 「うつ病」の国際的診断基準があります。また、標準的な治療方針というものも存在し、適切な治療が行えるのは、精神科においてのみです。

精神科受診のタイミング

 上記に記載した「抑うつ状態」が2週間程度続き、社会生活に不都合が起きていると自覚した時点で、早急に精神科専門医を受診すべきです。
 精神科では、心理テストで「抑うつ状態」の程度を評価できます。また、「抑うつ状態」の原因を検討し具体的な対策をすることができます。
 専門ではない科で治療を受け、「抑うつ状態」が長引き難治化してしまっている方が多くいます。この現実は大変残念なことです。

   

五月病

五月病について

 「五月病」とは、よく知られている言葉ですが、正式な医学用語ではありません。
 しかし、「五月病」という言葉によって、日本の社会ではある程度共通に認識できる「具合の悪い状態」を表現しているのも事実です。日本独自の考え方かもしれません。
 一般に「五月病」で表現している「具合の悪い状態」を整理してみると

1.新年度(4月)になり、環境の変化があること。
2.環境変化に伴い、心身の負担感・疲労感が生じていること。
3.環境変化からある程度の時間経過(およそ1ヶ月程度以上)があり、「やる気が出ない」「元気がない」という陰性の気分が生じていること。
となるでしょう。
 「重い五月病」の場合は、環境変化に対する「適応障害」による「抑うつ状態」として、精神科での治療が必要となります。

精神科受診のタイミング

・今後も新しい環境に慣れるとは思えない
 ・相談相手がいない
 ・気分転換ができない
 ・食欲が無い
 ・睡眠がとれない

以上の状況ならば、さらに状態が悪化する可能性があるため、精神科を受診することをおすすめします。 また、具合が悪いが抑うつ状態かどうかわからない、という方も受診したほうが良いと考えます。 「抑うつ状態」が持続すると、社会的な活動能力の低下をまねきます。病状を重くしないためにも、早めの受診をおすすめします。


   

不眠症

不眠症とは

 「不眠症」とは、「睡眠が減少した状態」をあらわした症状名です。「不眠症」には原因により様々なタイプが有ります。不眠が単独で存在することは少なく、別の病気に合併する症状として現れることが大変よくあります。

不眠症∈睡眠障害

 「不眠症」と「睡眠障害」は同じではありません。
 「睡眠障害」という言葉は、生命の維持から社会生活まであらゆる活動に支障を来す睡眠の障害の総称として使われます。
 「睡眠障害」には不眠症を含め様々な症状が有ります。
1. 不眠症
2. 睡眠関連呼吸障害
3. 中枢性過眠症
4. 概日リズム睡眠障害
5. 睡眠時随伴症
 などです。

不眠症の問題点

 「不眠症」が問題となる理由は、日常生活や社会生活に支障が出るためです。
 日中の眠気やだるさ、集中力の低下は、生活の質を落とすだけではなく、業務上のミスや事故につながることがあります。居眠り運転による交通事故は、社会問題にまでなってしまいます。
 また、高血圧・心筋梗塞・脳梗塞など身体疾患を誘発する可能性を高くします。
 「不眠症」は自覚しやすい症状のため、内科で睡眠薬の処方を受けている方が多いようです。しかし、実は根本にうつ病など精神疾患が隠れていることがあります。不眠が長引き治らない場合は、精神科での治療をおすすめします。

   

不眠の治療

不眠症の治療

 「不眠症」には様々なタイプが有ります。
1. 適応障害性不眠症(急性不眠症)
2. 精神生理性不眠症
3. 逆説性不眠症
4. 特発性不眠症
5. 精神疾患による不眠症
6. 不適切な睡眠衛生
7. 小児期の行動性不眠症
8. 薬物または物質による不眠症
9. 身体疾患による不眠症
 など。
 また、「不眠症」は従来から次のようなとらえ方もあります。

1. 入眠障害(就眠障害)
2. 熟眠障害(浅眠・途中覚醒)
3. 早朝覚醒
4. 睡眠時間短縮。
 「不眠症の治療」イコール「睡眠薬」ではありません。なぜ不眠の症状が起きているのか?根底にある病状は何か?様々な観点から不眠の検討をし、原因に対して治療にあたります。

不眠のチェック:アテネ不眠尺度(AIS)

 アテネ不眠尺度とは、世界保健機関(WHO)が中心になって設立した「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した世界共通の不眠症判定法です。客観的に不眠の程度を測定できます。

精神科受診のタイミング

 2週間継続して睡眠に問題を感じたら、受診をすべきだと考えます。突発休を繰り返し年休・有給休暇を消化してからあわてて受診することのないようにしてください。

治療の目標

 「睡眠日誌」を差し上げています。記録に残すことが治療と回復に大変有用です。いびき・ねぼけなど自身では気づかない問題は、家族からの情報が大変有用になります。
 治療目標は、「睡眠の質」そして「生活の質」を改善することです。

   

認知症について

「認知症」は病気の名前ではない

「認知症」とは、「状態」を表す言葉です。病気やけがによって脳の神経細胞がダメージを受け、記憶力や判断力などの「認知機能」が低下して、日常生活や社会生活に支障をきたす「状態」を指します。

 認知症を起こす代表的な「病名」は次の通りです。
1. アルツハイマー病
2. レビー小体型認知症
3. 血管性認知症
4. 前頭側頭型認知症

「認知症=高齢者」ではない

若者でも、脳の神経細胞がダメージを受け、認知症になり得ます。ただ、認知症患者に高齢者が多いのは、脳も身体のほかの部分と同じように年齢とともにダメージを受けることが多くなるからです。
 生活習慣病が大きな原因であるため、日頃から適度な運動をしている高齢者は認知症になりにくいようです。

認知症は治らない

残念ながら、ダメージを受けた脳を治すことはできません。ただ、ダメージをこれ以上広げないようにすれば、認知症の進行を遅らせることはできます。

精神科での治療の必要がある

認知症のための薬は複数ありますが、それぞれ作用が違います。認知機能や心理状態に応じて、薬を使い分ける必要があります。
 精神科は、脳と心を治療する診療科です。患者の状態に応じて適切な薬を適切量処方することが可能です。そのため、精神科での治療が重要になります。

精神科受診のタイミング

「もしかしたら?」と思ったときが受診すべきときです。
 物忘れが多くなったのは、年齢的なものなのか認知症なのかは、専門医なら判断できます。また、若くても認知症になる可能性は有るので、40代・50代でも思い当たる節が有るときは早めの受診を勧めます。
 「現在は認知症ではない」が「近いうちに認知症になる可能性が有る」という場合も多々あります。自分のため、また家族のためにも、不安が有る場合には早めに受診すると良いでしょう。

   

認知症に伴う行動・心理症状

認知症に伴う行動・心理症状

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